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リポート

LVMH メティエ ダールと京都大学が初の共同シンポジウムを開催—日本の伝統工芸、学術研究、グローバルラグジュアリー産業をつなぐ対話—

2025年10月2日(木)、LVMHグループの伝統産業の継承と発展を目的とした事業部「LVMH メティエ ダール」と京都大学は、大阪・関西万博フランス館にて初の共同シンポジウムを開催しました。
日仏の長年にわたる友好関係を背景に、日本の伝統工芸職人や科学者、そしてメゾンによる対話を通して、3領域を横断する新たな協働の可能性を探りました。
当日は、在京都フランス総領事サンドリン・ムシェ氏をはじめ多くの来賓が出席しました。

上: 京都大学大学院工学研究科 佐々木 善浩 教授
右下: 登壇した日本の伝統工芸職人(左から)桐本 泰一 氏(木と漆/輪島キリモト)、岡 岩太郎 氏(文化財修復(装潢)/株式会社岡墨光堂)、吉岡 更紗 氏(染織/染司よしおか)、道明 葵一郎 氏(組紐/株式会社道明)
左下: LVMHメティエ ダール ジャパン ディレクター 盛岡 笑奈 氏
©Masaya Fukuda

伝統工芸の未来を支える新たな連携の試みを探る
 日本の伝統工芸は、長い歴史の中で高度な技と美意識を磨いてきました。しかし近年、後継者や原材料の不足、道具や設備の喪失など、持続的な継承を脅かす課題に直面しています。
 そのような状況の中、LVMHメティエ ダールは、ラグジュアリー産業を支える卓越した職人技やサヴォワールフェール(匠の技)の保護、発展を志し、これまで日本の職人とのコラボレーションを通じて、伝統工芸が本来の神髄を保ちながら、グローバル市場へ広がる可能性を示してきました。
 一方、京都大学の研究者たちは、地域の職人と協働し、科学的知見をもとに伝統技法の理解を深め、新たな発想へとつなげてきました。
 本シンポジウムは、これまで「工芸」「科学」「ラグジュアリー」がそれぞれ独自に育んできた「知」が出会い、互いに交わることで、伝統と革新、そして日本の伝統文化の持続可能な未来を考える「対話」の場を創出することをめざして開催されました。

2つの基調講演:工芸の再発見と新たな創造
 基調講演では、2つのテーマが掲げられました。

1.「伝統×科学:失われた美の復興」
 京都大学大学院工学研究科の佐々木善浩教授および帝京科学大学の高谷光教授は、工芸・芸術・科学・ビジネスの相互関係について説明し、これらの分野を隔てる「誤解」の存在を指摘しました。自身が主宰する研究グループ「大人の自由研究」の事例を紹介しながら、科学的な視点が職人に新たな視点をもたらし、伝統の価値を再発見する契機になることを示しました。

2.「伝統×ラグジュアリー:新たなエコシステムの創造」
 LVMHメティエ ダールの盛岡笑奈氏は、ラグジュアリーと工芸の協働は製品開発にとどまらず、職人を取り巻くエコシステム全体の課題に向き合うものであると語りました。パリで開催された展覧会「Métiers du Japon」や、LVMH メティエ ダールのパートナー企業である岡山のデニム生地メーカー クロキ株式会社で実施された「アーティスト・イン・レジデンス」プログラムなどを例に挙げ、伝統と現代性、持続可能性の調和させる新たな仕組みづくりの重要性を強調しました。

職人、科学者、メゾンが描く「協働のカタチ」
 続くパネルディスカッションでは、日本を代表する4人の職人が登壇、それぞれの立場から研究者や企業との協働事例を紹介しました。
・桐本 泰一 氏(漆芸/輪島キリモト)
・岡 岩太郎 氏(文化財修復(装潢)/株式会社岡墨光堂)
・吉岡 更紗 氏(染織/染司よしおか)
・道明 葵一郎 氏(組紐/株式会社道明)

 第1セッションでは、「工芸と科学の協働」をテーマに、感性工学、化学、情報学、構造工学など多様な研究領域との連携を通じて得られた知見や、科学者との対話の難しさ、若い世代への技術継承の工夫などが語られました。
 第2セッションでは、「工芸とラグジュアリーの協働」をテーマに、原材料の確保、後継者育成、行政や企業との連携、そして世界への発信のあり方について議論。ラグジュアリーブランドと職人が協力することで、伝統の真髄を守りながらも、透明性や持続可能性といった現代的価値に即した新しい枠組みを築けることが確認されました。

伝統を未来へつなぐ国際的な対話の出発点に
 参加者たちが伝統工芸を現代の日常生活に根づかせることの難しさを指摘する一方で、国内外における日本の伝統産業の潜在力への期待も共有されました。職人、科学者、産業界、行政といった多様な視点が交わることで、協働によるイノベーションが貴重な文化を未来へつなぐという共通認識が広がりました。
 本シンポジウムを通じ、LVMHメティエ ダールと京都大学は、職人技のエコシステム活性化を推進していく決意を新たにしました。
 この取り組みは、世界の貴重な伝統を未来へと受け継ぐための国際的な連携の出発点となりました。

<本件に関するお問い合わせ>
Craft x Science Initiative 事務局
craftxscience*mail2.adm.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)