起業支援プログラム採択プロジェクト

京都大学・三菱商事Startup Catapult

物質科学的知見を取り入れた物理探査データの統合解析による地熱フィールドの地下状態推定システムの開発

事業領域環境・エネルギー
採択年度2024
支援状況支援終了

研究代表者プロフィール

澤山 和貴(SAWAYAMA Kazuki)

京都大学大学院理学研究科 附属地球熱学研究施設 助教

2021年九州大学大学院工学府博士後期課程修了。専門は岩石物理学。博士(工学)。2024年ISRM Rocha Medal受賞。日本地熱学会若手ネットワーク専門部会会長。

事業化プロデューサー

野村 亮太(NOMURA Ryota)

ウミトロン株式会社 事業責任者/ソフトウェアエンジニア

プロジェクトの概要

地熱発電は持続可能でコスト競争力のある優れた発電方法だが、水・熱・貯留構造の3つの条件を満たす地点を掘り当てるための探査コストや開発リスクが障壁となり、いまだ十分に普及しているとは言えない。これに対し、涵養や水圧破砕等により自然条件を人工的に制御することで、地熱開発のリスク低減や適地の拡大をめざすEGSと呼ばれる技術が近年着目されている。
本プロジェクトでは、地下状態の正確な把握を行う探査データの統合解析、経済性や環境影響の予測を行うシミュレーター、EGSの実行で重要となるモニタリングや破砕の技術を内製化し、従来型地熱開発企業に対して調査から実行までを含めたEGSサービスの実装化をめざす。

社会実装

地下状態推定の高度化および地熱坑井を対象とした坑井刺激事業

地熱の適地要件が厳しいことで掘削成功率が低くなり、経済的に地熱開発を進める上で大きな課題となっている。これに対して、本事業では、本技術の活用により開発の初期段階から地熱資源量を定量的に評価することによる開発リスク低減をめざす。また、掘削した結果、経済的な噴気量が確保できない坑井や、生産量の減衰が発生した坑井に対してEGS技術の適用を行うことで、地熱開発の経済性の改善や適地の拡大をめざした事業開発を進めている。

研究の独自性

物質科学的な見地から岩石の物理特性を記述する

地下亀裂内の水理特性は、地熱開発においてポテンシャルを評価する最も重要な指標の一つである。ところが地下の水の流れは目にすることができず、コストの高い掘削を行うまでは実際の生産量を見積もることができない。
そこで、私は地熱貯留層を構成する亀裂の発達した岩石において、水の流れやすさ(浸透率)を地表から取得可能な物理探査データ(電気比抵抗や地震波速度)と関連づける理論モデルを構築した。これをもとに開発中の物理探査データとの統合解析システムは、地下状態の客観的・定量的解析を可能とし、地下解析における属人性の排除と地下開発リスクの低減だけでなく、EGS技術の高精度予測をも実現する。

将来の展望

国内の地層条件に適した次世代型地熱資源開発の社会実装

近年は米国を中心にEGS技術の研究開発が進んでいる。しかしながら、国内の天然亀裂が多い地層に展開するうえでは、より精緻な地下の把握やシミュレーションが重要となる。
私たちはこれらの要素技術の開発に取り組むメンバーでチームを組み、米国の知見を吸収しながら国内に適した方式の開発を進めている。
数年後をめどに実際の地熱坑井を対象にした坑井刺激の実証試験を行い、その後国内外の地熱フィールドに展開していく事業展開を想定している。将来的には地熱開発の経済性の改善や発電規模の拡大を行い、世界の電源の脱炭素化に貢献することをめざしている。

2025年9月時点